オンラインコミュニティでは数日前から投稿して、コミュニティのメンバーの皆さんからご意見など頂いていたのですが、ある程度自分の中でしっくりする形ができてきたので、記事にまとめて公開することにしました。
なぜサブスクリプションモデルに移行するのか
まず、なぜ現在の「売り切りモデル」から「サブスクリプションモデル」に移行するのかを書きたいと思います。
先日 WordCamp Osaka に参加したときに、WordPress のプラグイン/テーマ販売やサービスを提供されている方を見つけてはビジネスの状況を聞かせて頂いたり、相談をさせて頂いたりしました。そのときに複数の方からアドバイス頂いたのは「このまま売り切りでずっとサポートもやる販売モデルだと、どこかで破綻するから見直したほうが良いよ」ということでした。
僕自身、このままサポート負荷が高まっていったときにどうなるのだろうということを記事にちょっと書いたり、先日の WordCamp で登壇したときのスライドにも「どうしましょう?」と書いて登壇者なのに投げっぱなしにするということをしたりしたのですが「まぁなんとかなるでしょ。」とその心配を先送りにしていました。でも、改めて実際に WordPress で(請負制作ではない)ビジネスをされている諸先輩方から指摘されてみると、これまで以上にリアルに「行き詰まってしまうかもしれない」ということを痛感し、考えるようになりました。
また、意外だったのは、複数のユーザーさんから「金銭的に応援したいからサブスクリプションのプランをつくってほしい」「売り切りで破綻してサポートが受けられなくなったり開発がとまって利用をやめざるを得なくなるほうがマイナスなのでサブスクリプションにしてほしい」という声を頂いたことでした。
海外の WordPress 市場では WooCommerce のアドオンなど、サブスクリプションモデルに移行する事例が増えてきているように思いますが、日本では、特にテーマ販売においてはサブスクリプションモデルを採用しているところを見かけることはほぼありません。僕自身、Netflix や Adobe などいくつかのサブスクリプションサービスを利用するようになったものの、まだソフトウェアに継続課金するということに何となく違和感があり、他のテーマ販売業者さんがやっていないということは、ユーザーの心理としてもテーマでサブスクリプションモデルというのは受け入れられないものがあるのだろうなと思っていました。
でも複数のユーザーさんから「サブスクリプションモデルがほしい」という意見を頂き、僕が思っている以上に市場はサブスクリプションモデルに抵抗がないのではないか、また、所有することより利用し続けられることに価値を見出すようになってきているのではないか、と思うようになりました。
Snow Monkey はユーザーの意見を取り入れたり、他のテーマの動向や WordPress 自体の動向を追って日々アップデートを繰り返しています。当然、それは Snow Monkey をこれからもずっと安心して使ってもらいたい、そして触るたびに「Snow Monkey を選んで良かった」と思ってもらいたいと思っているからで、そのためには破綻してしまうことが見えている現在の買い切りモデルよりも、継続的に支援を得られ、開発やサポートを長期的に継続できる可能性の高いサブスクリプションモデルのほうが Snow Monkey の思想に近いと言えます。
そのような出来事や考えを踏まえ、オンラインコミュニティでも数日前からメンバーの皆さんに投稿・相談していますが、好意的な反応を頂いており、本格的にサブスクリプションモデルに移行することにしました。
サービス内容について
Snow Monkey を購入いただいた方に現在提供しているサービスは主に次のようなものになります。
- テーマの自動アップデート
- オンラインコミュニティへの参加
- サポートフォーラムの利用(参加)
- オンラインコミュニティメンバー限定記事
現在は買い切りモデルであり、一度購入して頂いた方には無期限に自動アップデートを提供していますし、サポートフォーラムの利用も特に制限はしていません。サブスクリプションモデルを採用した場合、課金ユーザーと課金を終了したユーザーとで、何らかサービスを差別化しなくてはなりません。
一般的なウェブサービスでは課金を終了するとサービスの利用自体ができなくなりますが、Snow Monkey は購入時にテーマ自体を提供するので、課金が終了したとしてもテーマは購入者の手元にあり、それ自体の利用を制限することはできません。
サブスクリプションモデルのテーマやプラグインはどうしているか調べてみると「課金ユーザーにはアップデートとサポートを提供」「課金が終了したユーザーはプロダクト自体は利用できるけどアップデートとサポートは提供されない」というのが一般的なようでした。
さて、ここで Snow Monkey の場合どうするかですが、Snow Monkey は試用してもらいやすいように GitHub でソースコードを公開しています。つまり、アップデートを制限したところで、やろうと思えば GitHub からいつでも最新版をダウンロードして利用できてしまいますし、また、高頻度のアップデートで常に最新のニーズに対応していくということは Snow Monkey の他のテーマに対する優位性の1つなので、アップデートを制限するのはちょっと違うなという違和感があります。そこを制限してしまうと Snow Monkey 自体の世界観を壊してしまうというか…。なので自動アップデートは課金が終了したユーザーにも無期限で提供することにしました。
次に考えられるのはオンラインコミュニティとサポートフォーラムの参加権です。
オンラインコミュニティは、開発者である僕と Snow Monkey を使用しているユーザーとの情報共有の場所であり、みんなのコミュニケーションの場所です。Snow Monkey はたまに後方互換性を維持しないアップデートをおこなうことがあり、そういうときはオンラインコミュニティで事前にアナウンスして、試す時間をとってもらうためにベータ版をリリースしたりしています。もし課金が終了したからといってオンラインコミュニティを退会させてしまうと、そのような予告を知ることができず、アップデートでいきなりサイトが崩れてしまう、ということもありえます。そうすると著しく満足度は低下するでしょうし、それも Snow Monkey の思想とはちょっと違うなという感じがします。また、オンラインコミュニティはユーザーからのフィードバックをもらう貴重な場所でもあるので、そういう意味でもオンラインコミュニティへの参加を制限するというのはしないほうが良いように思います。
ではサポートフォーラムはどうでしょうか。サポートフォーラムの主な利用目的は Snow Monkey やデザインのカスタマイズ方法についてであり、恐らくそのようなサポートが必要なのはサイトの立ち上げ時期だけだろうなと想像しました。意外なことに、オンラインコミュニティには購入された方の大半が参加されていますが、サポートフォーラムへ参加される方は半数程度とそう多くありません。つまり、サポートフォーラムを利用するのは主に Snow Monkey の利用初期であり「継続的に利用し続けたい方」と「そこまで必要としていない方」がある程度はっきりわかれていると言えます。そしてそれは「サポートを含め Snow Monkey を継続利用したい方」と「最初だけサポートしてほしいけどそれ以降は情報だけ提供されれば自分で使用できる」ということで、最もサブスクリプションの考え方にマッチしているのではと感じました。
そういうことで、一度購入していただいた方にはアップデートの提供もオンラインコミュニティへの参加も無期限で提供、サポートフォーラムは課金中のユーザーだけが利用(書き込み)可能、とすることにしました。
(現状オンラインコミュニティでもちょっとしたカスタマイズのサポートも回答しちゃったりしているので、その辺はどちらで何をやるかちゃんとルール決めしないといけませんね)
現在の価格・サービス体系と今後の価格・サービス体系
おおまかな方針は前述したとおりですが、今回のサブスクリプションモデルへの移行を機にカートを BASE から WooCommerce に変更することにしたので、せっかくなのでいくつかのサービスもそちらのユーザー情報に紐づけて提供することにしました。そのほうが UX 的にもすっきりするかなと。
主な変更は以下のとおりです。
これまで
- 買い切り:16,200円
- 販売:BASE
オンラインコミュニティへの参加 | ○ |
---|---|
サポートフォーラムへの投稿 | ○(要ユーザー登録) |
自動アップデート | ○ |
メンバー限定記事 | パスワード入力 |
デザインスキン登録 | 誰でも申請可能 |
これから
- サブスクリプション:16,200円/年払い
- 販売:本サイト
課金中 | 課金停止 | これまでのユーザー | |
---|---|---|---|
オンラインコミュニティへの参加 | ○ | ○ | ○ |
サポートフォーラムへの投稿 | ○ | – | ○ (要ユーザー登録) |
自動アップデート | ○ | ○ | ○ |
メンバー限定記事 | ○ | – | ○ (要ユーザー登録) |
デザインスキン登録 | ○ | – (登録済みのスキン非表示) |
○ (要ユーザー登録) |
ジョブボード | ○ | – (登録済みのスキル/依頼非表示) |
○ (要ユーザー登録) |
メンバー限定記事について
Snow Monkey のサイトには、オンラインコミュニティメンバー限定の記事があります。今は記事をパスワードで制限し、パスワードはオンラインコミュニティで共有という運用にしていますが、いちいちパスワードを確認するのは面倒だし、スマホだとうまく Facebook グループでパスワードだけコピーできなくて閲覧のハードルが高いんですよね。なので、パスワード制限は廃止して、WooCommerce の顧客データと紐づけて課金状態にあるユーザーはサイトにログインするだけで記事が見れるようにしようと考えています。
デザインスキンの登録について
Snow Monkey にはデザインを簡単に切り替えられるデザインスキンという機能があります。僕がつくって提供しているオフィシャルなものは1つしかありませんが、作り方記事と Snow Monkey サイトへの掲載フォームを提供していて、つくったデザインスキンを誰でも Snow Monkey サイトへ掲載できるようにしています。
まだ申請頂いて掲載したのは1つだけなのですが、今後デザインスキンの登録が増えると良いなと思っていて、そのためにも「フォームから申請〜僕が確認して掲載」という流れよりも「Snow Monkey ユーザーなら Snow Monkey サイトにログインすれば管理画面から入力するだけで登録・公開できる」という流れのほうがスマートだなと思い、そのようにしてしまうことにしました。
まだその機能つくっていないので後々の変更を予定しています。まだ詳しい仕様は決めていませんが、課金が終了すると掲載も終了する、という感じにしたいなと考えています。デザインスキン作成のオンラインもくもく会もやると言いながらやれていないので、近いうちの土曜日午前中とかやりたい!やるぞ!
ジョブボードについて
オンラインコミュニティでサブスクリプションについて相談したときに、
「誰に依頼していいかわからない」「いくらぐらいの値段でお願いしていいかわからない」とかでカスタマイズを依頼するのに苦労されてるようなので、Snow Monkey のコミュニティに入れば(信頼できる)Snow Monkey をカスタマイズできる製作者を見つけることが出来るというのは、一つの価値なのかなと思っています。
というアドバイスをもらいました。これは「確かに!」と思わされましたし、僕も Snow Monkey のユーザー間で小さな経済圏ができると良いなと思っていたので、そのためにちょっとしたジョブボード的なものをつくってみたいなと計画しています。Snow Monkey のユーザーさん同士で仕事のやりとりをしたり、デザインが苦手なので誰かロゴをつくってくださいとか言ったら同じ Snow Monkey のユーザーがつくってくれるとかなんか良くないですか?うまく説明できませんが、なんか良いな〜って。どうですかね?
本格的なものは難しいので、例えば Snow Monkey サイトにログインして管理画面から「自分が提供可能なスキル(ロゴつくれますとか CSS 書けますとか)」を掲載したり「依頼したいこと(ロゴをつくってほしいとか、デザインをカスタマイズしてほしいとか)」を掲載できるようにしたいなと考えています。で、ユーザーがジョブボードを見てマッチする方がいたらあとは直接メールや DM なりでやりとりしてもらうという感じ。これならそんなに実装は難しくないし、これも課金状態と連携させて閲覧できるようにしたいなと考えています。
具体的に何を掲載できるようにすると使い勝手が良いのかはやってみないとわからいので、β版ができたらオンラインコミュニティでクローズドに試してもらってブラッシュアップできたら良いなと思います。
まとめ
今後継続して Snow Monkey を開発したりユーザーサポートをしていけるようにサブスクリプションモデルへの以降は必須だと思えるようになりましたが、課金が終了したからといって安心して使用できないということにはしたくありません。継続課金ですが、いつでもサブスクリプションを停止できるような形で準備を進めています。
今はとりあえず年額課金の形で準備していますが、使い勝手的には月額課金だろうなと考えていて、ただ、そうすると1ヶ月だけ課金して停止するという方も一定数いると思いますし、それでなくとも、今の価格を12分割するわけですから、しばらくは収入がガクッとへるのは確実なわけで、ユーザーにとっては月額課金のほうが良いだろうなとは思いつつも、ちょっと躊躇しています。とりあえずは年額課金だけではじめようと思っていますが、希望する方が多いようであればいずれ月額課金も始めたいと考えています。
ちなみに、現在の買い切りモデルで購入された方は、特にサブスクリプションモデルに切り替えてもらったりするつもりはありません。販売をサブスクリプションモデルにすると同時に買い切りモデル(= BASE での販売)はやめようと思っているので、購入を迷われている方は早めに購入されたほうがお得といえます。まだいろいろつくっている途中なのでいつからサブスクリプションモデルにします!と明言できない状態ではあるのですが、今の感じだと7月頭くらいからはサブスクリプションにできるのではないかなと考えています。
WooCommerece を運用するのもサブスクリプションをやるのもはじめてなので、サブスクリプションにしたらしたでまた色々と不具合があったりとご迷惑をおかけすることもあるかもしれませんが、その際は何卒ご協力のほどよろしくお願いいたします…!