受託から WordPress テーマ開発/販売にシフトしての1年を振り返る

有料の WordPress テーマ、Snow Monkey をリリースしてから1年が過ぎました。上半期は事前に受けていた仕事などもあったので、受託と WordPress テーマ販売の2本柱でしたが、下半期は基本的に新規の受託はお断りする形でやってきました。

(僕が過去にお受けした案件の改修、Snow Monkey を使った受託についてはスケジュールや予算があったものは数件お受けしましたが、来年はその辺もどこまでやるか明確に線引しなければと考えているので、別エントリーにでも書きたいと思います)

月の売り上げはまだ目標には達しておらず、このままではいずれ受託も普通にやっていかないといけない感じで、まだまだチャレンジャーな身分ではあるのですが、あまり個人で WordPress テーマ販売で生計を立てているという方は多くないと思いますので、個人で WordPress テーマ販売をやってみたいという方の参考になればと思い、書いてみます。

売り上げはどれくらいか

2017/10275,400円
2017/11194,400円
2017/12243,300円
2018/01437,400円
2018/02486,600円
2018/03518,400円
2018/04351,000円
2018/05631,800円
2018/06835,920円
2018/07379,080円
2018/08149,688円
2018/09298,384円
2018/10412,864円
2018/11385,000円

どうでしょう?サラリーマン時代の僕ならこの金額だけ見れば、ええやん!と思っていたと思いますが、フリーランスになると健康保険やら税金やらの金額がガッとあがりますし、正直、しばらく赤字状態が続いています。もしまだ独身だったり副業でやれるのであれば、なかなか良い金額かもしれませんね。

2017/10〜2018/6までは売り切り、2018/7〜はサブスクリプションで販売しています。5月6月は何があったという感じの高い売り上げだったのですが、サブスクリプションに移行後は停滞気味なので、どうにかせねばなぁと悩んでいるところです。

やったこと

10月にぺちぱなという長崎の勉強会でちょうどやったこと大全をお話させてもらったのでそちらのスライドを。

WordPress テーマ販売所感

売り切りでいくか、サブスクリプションでいくか

まずはこれを決めたほうが良いと思います。販売モデルを決めることは、

  1. 一定の期間で新しいテーマをリリースし、古いテーマはメンテナンスアップデートのみ or アップデートをやめる
  2. 業種ごとなどに複数テーマをリリースし、それぞれを最低限メンテナンスアップデートしていく
  3. 1つのテーマを WordPress の最新動向にあわせて常にアップデートし続ける

の、どの方向性でやるか、ということにも繋がってきます。売り切りは(1)、サブスクリプションは(3)が向いていると思います。(2)はどちらの販売モデルでも対応できそう。僕は「WordPress テーマ開発を極めて”最強”のテーマをつくりたい」と思っているので、(3)のパターンを選びました。

ちょっと前と比べると環境が整ってきて、サブスクリプションでの販売もやりやすくなりました。僕は WooCommerce Subscriptions を利用していますが、Stripe で自作しても良いでしょうし。

個人的には、ビジネスの効率を考えるなら(1)のパターンが良いと感じています。テーマをリリースして、だいたい売れそうなところに売り切ったら次のテーマをリリースして…を繰り返すと。

やっぱり1つのテーマを常に最新の動向にあわせてアップデートし続けるというのは難しいんですよね。直近だとエディターが Gutenberg になりますが、ほぼすべての有料テーマでショートコードを簡単に挿入できるボタンが機能しなくなっています(クラシックブロック内でなら使えるだろうけど)。でも、それをなんとかしようというテーマ開発者の動きは、僕がウォッチしている限りではほとんど見られません。対応が難しいんだと思うんですよね。そうなると Gutenberg に対応した新しいテーマをリリースするほうが簡単なので、多分他の有料テーマはそういう流れにしていくんじゃないかなぁと予想しています(次点として Gutenberg をディスってクラシックエディターを推奨する流れがありそう)。

価格を決める

あんまり自信がないから安い価格にしよう…という考えは絶対にやめたほうが良いです。

単純に、価格を半分にすれば販売数を2倍にしなければなりません。販売数を増やすというのは非常に難しいです。売れないからといって安易に価格を下げることは僕はあまりオススメしません。そしてもし販売数を増やせたとしても、その分サポートコストが増大します。そうなると開発にまわす時間も減らさざるをえなくなるので、その辺りのバランスも考えながら価格を決めてみてください。

WordPress テーマを買うユーザーは(どの層をターゲットにするかにもよると思いますが)ほとんどの場合、コードの品質はよくわからない個人ユーザーが多いと思います。その場合、価格が高い = 品質が高いという認識をされやすくなります。機能やデザインできちんと訴求できるのであれば、ある程度価格を上げて、多売しなくても一定の売り上げを確保できる方向を目ざすというのが個人的にはオススメです。

ちなみに、今 Snow Monkey は 15,000円/年ですが、既存ユーザーの支払い価格は据え置きで、新規ユーザーの購入価格は毎年少しずつ上げていく…というのは良いんじゃないかなと考えたりしています。

アクティベーション機能はつけたほうが良い

アクティベーション機能、要は購入したユーザーにキーを発行し、認証できたらアップデートを提供するとか、そういう機能のことです。

Snow Monkey はアクティベーション機能をつけておらず、一度購入すればいつまでもアップデートできるようにしていますが、テーマさえ手にはいれば良いという方にとっては、一度課金すれば常に最新の Snow Monkey が手に入るということになるので、サブスクリプションを継続する必要性が薄くなります。

テーマ以外に付加価値をつけてサブスクリプションを継続してもらおうといろいろやってはいますが、これから WordPress テーマ販売を始めようという方には、個人的にはアクティベーション機能をつけることをオススメします。

ユーザーとのコミュニケーションの場は重要

Snow Monkey は、Facebook グループを使ったオンラインコミュニティと、Snow Monkey 公式サイト内につくったサポートフォーラムの2箇所がユーザーとの接点として存在しています。

Snow Monkey は1年間で約170回のアップデートをおこないましたが、その多くがユーザーからのフィードバックに基づくものです。

WordPress テーマは、WordPress を動かすためのサーバー環境が PHP5だったり7だったり Apatch だったり Nginx だったりと様々ですし、数万個もあるプラグインとユーザーが書いたコードが組み合わさった無限の環境で正しく動作できることが求められます。それはやっぱり1人で検証するのって不可能なんですよね。1人で検証できる範囲なんてたかが知れているので、1人で入念に検証し時間をかけてリリースするよりは、とっととリリースしてしまってユーザーからのフィードバックで修正を入れていくほうが効率的です。

それが面倒だという方は、前述した「一定の期間で新しいテーマをリリースし、古いテーマはメンテナンスアップデートのみ or アップデートをやめる」のパターンで売り切っていくのが向いているかもしれませんね。

また、ユーザーとコミュニケーションをとることのメリットとして「AI だと思われない」ようにすることができる、ということです。例えば僕は MW WP Form という問い合わせフォームプラグインを無料で公開していますが、ほぼ毎日、僕を AI やサポートロボットと思っているだろうというようなメールが届きます。開発やサポートの裏には必ず生身の人間がいます。そこを無視してズケズケと踏み込んでくる方の相手をするのは、個人プロダクトの場合は10,000%割に合いません。

ユーザーとコミュニケーションをとる場があれば、僕が生身の人間である、ということが伝えやすくなります。そのためか、Snow Monkey の場合は、ストレスを感じる連絡ややりとりが MW WP Form などのユーザーとのコミュニケーションの場がないプロダクトに比べると圧倒的に少ないです。これもプロダクトを長く継続させていくためには大事なポイントだと思います。

機能は盛り込みすぎない

WordPress テーマについて調べていると「多機能であること」を評価しているレビュー記事が目立ちます。ただ、これから WordPress テーマを開発しようと思っている方には、無闇矢鱈に機能を追加しないことをオススメします。

「いやいや、Snow Monkey も十分多機能でしょう」と思われた方もいるかもしれませんが、オンラインコミュニティやサポートフォーラムで僕とやり取りをしたことがある方は、僕がなんでもかんでも機能追加するわけではない、ということはよくご存知だと思いますw

Snow Monkey は「ほとんどの人が使うであろう機能」の場合は機能を追加するようにしています。「あったほうが便利」くらいで安易に機能追加すると、数万個のプラグインとユーザーコードが組み合わさった多種多様な環境では必ずコンフリクトします。自分が想定していなかった箇所に影響が発生したり、特定のプラグインは使えなくなったり、ということが起こりやすくなってしまうのです。それはつまり、サポートコストが増大するということでもあります。

Snow Monkey の哲学は「多機能」ではなく「拡張性」です。なんとなくあったら良いな〜くらいの機能はテーマに実装せず、しようと思えば、プラグインを追加したり子テーマにちょろっとコードをコピペすれば簡単に実装することができる。そのようなテーマであり続けることを念頭において開発しています。

技術力は必要ない

これだけは断言できますが、自分で WordPress テーマを開発して販売するにおいて、技術力は全くマストではありません。

もちろん、セキュリティの問題などがあるので、技術力があるに越したことはないと思いますし、購入してもらうのだから最低限の品質を保つのは義務だと僕は考えているのですが、実際問題、巷の野良テーマのコードを見てみると、サニタイズ漏れ(というかそもそもサニタイズって知ってる…?というレベルなことも…)があっても放っとかれていたり、コアが提供している機能を(多分無意識的に)殺してしまっていたり、そういうテーマの割合がすごく多いと感じます。

でも言及数や盛り上がりを見ていると Snow Monkey より確実に売れてそうなんですよね。つまり、ユーザーはそこをそれほど重要視していない(というかどのテーマでも当たり前に品質が保たれていると思っている)のだと思うんですよね。

だから WordPress テーマ販売で売り上げを上げるということだけを考えれば、別に技術力が最低限の水準に達していなかったとしても、全然できてしまうということです。

売る力は必要

上とつながることでもありますが、技術者が陥りやすい罠として、技術的に素晴らしいものをつくれば売れると考えてしまう、ということがあると思います。僕もずっと受託開発をやってきて自分でモノを売るということをしてこなかったので、どうしてもそういう発想になりがちで、新機能や新商品をリリースすることでなんとかしようとしてしまうのですが、多分それは良い解決策ではありません。

本当はそのつくった WordPress テーマをどのようなターゲットにどう訴求していくか、どうマーケットをつくっていくか、みたいなところが大事だと思うんですよね。マーケティング能力というか販売力というか。売れてそうな WordPress テーマ開発者のサイトや Twitter などを見るとやっぱりそういうのが上手いなぁと思うことが多いです。

僕は売る力は全然無いので、最低限の知識はつけなければと今年はビジネス書を何冊も読みました。効果があったかはわかりませんが、やっぱり事例などを見ると新しいアイデアが湧いてくるので、煮詰まったときはビジネス書(理論の本じゃなくて実業をやっている方の体験談のやつ)、オススメです。

自分自身がプロダクトのユーザーでいつづける

一番大事なのは、自分自身がプロダクトのユーザーでいつづけることだと思います。僕はこれまでいくつかプロダクトをつくってきていますが、自分が使わなくなったプロダクトは、軒並みアップデートするのをやめてしまっています。要望やバグ報告がきたとしても、自分が使っていないとどうしても優先度が下がってしまうんですよね…。

もし個人プロダクト開発を中心にやっていきたいなら、自分自身がヘビーユーザーになり、そのプロダクトが自分にとって無くてはならないもの、という状態を保っておくのが良いと思います。

Snow Monkey アドベントカレンダーにご参加ください!

ここまで思いつくままに書いてみました。考えていたネタは完全に消費してしまったので、明日からどうするか考えなければいけません…(でも明日休みだからな…書けないかも白目)

ということで、参加しても良いよーという方がいましたらぜひご参加くださいませ。ユーザーさんの声や、他業者さんからみた Snow Monkey などめっちゃ聞きたいので、よろしければぜひ!

Snow Monkey オンラインコミュニティ

Snow Monkey をより良いテーマにするために、今後の機能開発等について情報共有したりディスカッションをしたりする場所です。より多くのユーザーの交流があったほうがより良いプロダクトに育っていくと思いますので、ぜひご参加ください!