テーマ設定の自由度や、フォーラムといったオープンな場を設置。その充実したアフターサポートで、Web制作業界で幅広く支持を集めている『Snow Monkey』。
今回は、そのSnow Monkeyの開発者 北島 卓と、Webデザイナーである吉田 樹さん、そして自社のサイトを制作している経営者のつぶさんとの座談会を企画。
皆さんが持っていたWordPressそのものへのイメージから、Snow Monkeyを使ったことで、変化した仕事の幅。”フォーラム”といったユーザー同士が交流し、Snow Monkeyを発展させる場の価値。
そして、Snow Monkeyの未来について紐解きました。
カラムーチョ伊地知
編集者、ライター、Web・PRディレクター
当記事のインタビュー・執筆・編集を担当。
京都を拠点に活動。RASHISA主宰「編集・ライター講座」講師。PRプロフェッショナル協会認定PRディレクター。またパラレルキャリアをテーマにした個人Webメディア『ニソクノワラジ』の企画編集を務める。
参加者プロフィール
北島 卓
Snow Monkeyの開発者
フリーランスとして活動しつつ、Snow Monkeyを開発。Web業界を中心に幅広く支持を集めている。
吉田 樹
Webデザイナー/ライター
Webサイト制作やメディア運営、インタビュー記事の執筆などを中心に活動。2019年6月よりSnow Monkeyを使用し、Webサイトのデザインや制作を行なっている。
つぶ
株式会社digi plus 取締役/合同会社エラフ代表社員
プライベートでも仕事でもパソコンを触ることが好き、サイト制作やプログラミングを行う。情報収集が好き。現在はSnow Monkeyを使っていくつものサイト制作や設置支援、事業展開を行なっている。
Snow Monkeyは設定が少ない不自由さがあるからこそ、できないところは自分でスキルアップしてやってみようと思えるんです。
今回はみなさん、よろしくお願いいたします。
一同:よろしくお願いいたします!
吉田さんは、Webデザイナーとして様々なWordPressのテーマを使ってサイト制作をしているそうですが、不満点などはありますか?
うーん。不満点ではないですが、Webデザイナーとして、細かいところまで自分で調整したいときはコードを書く必要があるという点に、ハードルが高いなと感じる時期はありました。
私が初めてWordPressを使ったのは、Webデザイナーとしてお仕事を受ける前の、ライターとして『Webメディア』で記事を作成したときです。
そのWebメディアでは、デザイン重視というよりは、記事を早くたくさん掲載することの方が優先度が高かった。なので、WordPressの初心者でもすぐに使えるテーマの方が使い勝手は良かったんです。たとえば、クリックひとつでデザインが選べる機能が付いたテーマとか。
でもその後、Webデザイナーとしてホームページ作成のご依頼をいただいた時に同じテーマを使おうとしたら、タイトルデザインなどの融通がきかなかったんですよね。これは困ったぞ、と(笑)。初心者向けのテーマでは、お客様が望む世界観に合わせるのが難しかったんです。
それで、使い勝手のいいWordPressテーマを探していた時、ネットの口コミでSnow Monkeyに出会いました。
確かにWordPressの一部テーマでは、管理画面での設定項目の多さが使いにくい原因なのかな、って思います。
あるテーマで設定を変えるのに、100個、200個の選択肢があって、それをそれぞれ設定していくのがすごく大変で……。さらにアップデートの後には設定のレイアウトが変わっていて……。
僕がSnow Monkeyを始める前も、管理画面での設定項目が豊富なテーマは多かったですね。コードを書くというよりは一つ一つコツコツと地道に設定していく感じで。
コーポレートサイト用のWordPressテーマはほとんどなかったので、最初は「自身の受託業務で気軽に使えるもの」を開発方針にしていました。お客様のニーズがあるから、という動機というよりは、自分で使えるものを開発していたという感じですかね。
なるほど。今のようにコーポレート用に使われるようになったのは想定外だったんですね。
当初はまったく予想していませんでした。
「ブログ用・メディア用」といったキャッチコピーでしか売れないと思っていたので、自分が仕事で使いやすいようにカスタマイズしつつ、名目上はブログ用・メディア用として設定していました。
でも、そのうちコーポレート用に使ってくれるユーザーさんが増えてきたので、キャッチコピーも「コーポレート用」にシフトしました。
僕はSnow Monkeyを導入して、管理画面での設定項目に頼る必要がなくなって圧倒的に自由度が高まりました。
管理画面での設定項目が多いと色々とカスタマイズはできるんですけど、多すぎると逆に、設定作業がとにかく面倒に感じるんです。「ここ変えたい時は、どこで設定するんだっけ?」みたいに迷子になることもあります(苦笑)。
でも、Snow Monkeyならコードでもカスタマイズできますし、設定の場所も変わることがないんです。それがものすごく使いやすいです。
受託業務をしていた頃、僕はいろんな会社や個人の方からお仕事をいただいていました。デザイナーさんも個性がそれぞれなので、最初からテーマに色がしっかりついてしまっていると、デザイナーさんの要望に合わせられなかったりする。なので、デザインは気持ち薄めにしていますね。
Snow Monkeyはデザイン面でカスタマイズできることが多いので、クリエイティブの幅は間違いなく広がっています。
つぶさんも仰っていましたが、(Snow Monkey以外の)特に初心者向けのWordPressテーマでは、管理画面で細かい設定ができるぶん、細かすぎてうまい具合に自分で変更を加えるのが難しいです。
なので、Snow Monkeyはいろんなカスタマイズができるのに、ここまで使いやすいのか!という驚きはありました。設定項目がシンプルだからこそ、デザイン面でも自由度が高いな、って。
それはありがとうございます。嬉しいですね。
僕は、シンプルな設定項目にすることを意識しているんです。それが自由度の高さを引き出しているのかもしれませんね。
つぶさんは、自由度が高まったことでご自身のサイトにはどんな変化がありましたか?
以前に使用していたWordPressテーマでは、記事と見た目の設定を行ったり来たりしながら作っていました。ずっと管理画面の設定項目とにらめっこしている状況です。
ですが、Snow Monkeyにしてからは記事を書いてから見た目の気になる箇所を自分で調整するという流れになりました。
設定項目を見る時間がかなり減って、記事作りに重点を置けるようになりました。
私もデザイン面で変化がありましたね。
最低限のコードしか書けない私は “自由度” という視点から見れば、まだ狭い範囲しか使いこなせていないのかもしれません。
それでもSnow Monkeyのおかげで、お客様に見本としてお見せするものがかなり迅速に作れるようになり、お客様に提案しやすくなりました。
でも私、Snow Monkeyのことを「高度な専門知識がいる、中・上級者用のテーマ」だと思っていたんですよ(笑)
え、そうなんですか。
Webサイト制作を始めた頃の私は、コードに関する知識が全然なくて……。テーマ探しでSnow Monkeyをオススメするサイトを見つけても、コードとかが紹介されていると(私には使いこなせないかな……)と思っていました。
でも、Webマーケターの友人が私より少し前にSnow Monkeyを使い始めて、強く勧めてくれたんです。友人に使えるなら私にも使えるかもしれない、と思ったのがSnow Monkeyを購入するきっかけです。
では、WordPressというCMS自体について、使う前はどんな印象がありましたか?
僕はWordPressを「無料で使えるすごいやつ」だと思っていました(笑)
一同:(笑)
当時は「サイト作成をいかに効率的にできるか」ということを基準にツールを探していました。
効率的にできそうな他のツールもあるのですが、高価な物やパソコンのスペックが足りなかったりと条件が合わなくて……。無料のツールを探している時に、WordPressに出会いました。
WordPressだと、管理画面を触るだけでクオリティの高いサイトを作ることができる。これは魅力的だな、と思いました。
すごく理解できる意見ですね。
僕も自分のブログを立ち上げようと思ってWordPressを使い始めました。HTMLだけだと、一つの記事を書くのに、トップページなどのいろんなページをいちいち変更しないといけないんです。でもWordPressなら、記事一つ書くだけで更新ができる。これはとても便利だなと思っていました。
ただ、WordPressのテーマをオリジナルで作ろうとすると、いちいちコードを書かないといけなくなる。僕もそこらへんはまだ全然分かっていなかったのでとても苦労しました。
北島さんが抱えていた既存のWordPressに対する煩わしさは、Snow Monkeyのどのような仕様に反映されていますか?
まず、ユーザーが絶対に考えることは仕様に入れようと思っています。例えば、ヘッダーはオーバーレイにするとか、サイドバーをつけるとか。
一方で、ユーザーの一部は使うけど、使わないユーザーもいるだろうなという機能はできるだけ省いています。
なので、最初はみんなが変えるであろう機能は最初からつけて、時間がかからないようにする。その上で細かいところは個人でコードを書いてもらって、自由度は担保する。
どの作業に時間をかけてもらって、逆にどこで時間を短縮してもらうのかという設計を常に考えていますね。
そういった北島さんの想いやこだわりに、すごく共感を抱いています。使ってみると、(北島さんはここまでユーザーのことを考えているんだな)ということがすごく伝わってくるし、ありがたみを感じます。
サイトを作っていて「あ、こういう機能ほしいな」と思い付くことはあるんですが、「これはみんな使いたい機能なのかな?」という疑問も浮かぶようになって、自分の視座がすごく上がりました。
お客様から要望があれば、設定の追加や変更をしているんですけど、一方でお断りすることも多いです。要望の中でユーザーの半分以上は使うだろうな、って機能は追加していますね。
「機能がない」というところにも何か意図があるのかな、と思うんです。これは北島さんが何か考えているんだろうなみたいな(笑)
Snow Monkeyを使っているときの様子を例えるなら、北島さんが操縦する船に載せてもらっているような感覚。船長である北島さんについていくぞ!という気持ちです。
それに、Snow Monkeyは設定項目が少ない不自由さがあるからこそ、できないところは自分でスキルアップしてやってみようと思えるんです。できることが無限に広がっている感覚です。
僕以外の人が「Snow Monkeyってこういうものだよね」っていう共通した思想を持ってくれていたら、僕が抜けても誰かが開発し続けていくかもしれない。
WordPressのテーマ開発業界は、どんな問題を抱えているんでしょうか?
業界的には、技術的な面ですごくハードルが上がりました。
以前はプログラミングがわからない有名なブロガーさんでも、自分のテーマを作って販売したりして。それが一時期流行っていました。
でも今は、WordPressテーマ・プラグイン開発自体のハードルが上がりすぎて、なかなかそういったことも難しい。僕も都度、調べながらやっています。
北島さんはSnow Monkeyの運営で、フォーラム・Slack・GitHubでユーザーと直接コミュニケーションをとり、アフターサポートに力を入れていますよね。その理由は?
うーん。別に戦略的にやっているわけではないんですけど、不具合や要望をフォーラム上でいただくので、議論しながら改善を繰り返しているという感じですかね。自然とやっている感じです。
オープンな場があることは個人的に好きな点ですし、他の有料テーマではあまりない珍しい点だとも思うので、今後はもっと注力していきたいと思っています。
北島さんは「オープンソース的な文化の中で開発していきたい」ともお話されていましたよね。
そうですね。
そもそも、僕が本格的に物を作る時に初めて使ったのがWordPressだったんです。
今まで“会社の中”という限定的な空間で仕事をしていたので、WordPressの中でユーザー同士が話し合いながら文化を作っていることが衝撃でした。
なので、オープンソースはユーザーが作り上げる文化の中ででき上がっていくものだ、っていうイメージが僕の中に強くあるんだと思いますね。
僕、もともとの出会いはWordCampで北島さんが登壇されていたセッションでした。
その時に「すごい考え方の人だな」と。
「自由」についての考え方や、セッション中に売上までもさらっと公開してしまうオープンな感じに魅かれて(笑)北島さんのことが好きになりました。
気軽に相談できるフォーラムがあるのは、めちゃくちゃありがたく感じています。
テーマを販売している会社はたくさんありますが、アフターサポートが充実していないって話はよく聞くんですよね。
私もいくつかのテーマを使いながらサポートの内容をのぞいていると、「アフターサポートの内容は開発者の方のお人柄が見えるな」と感じています。どちらが良い/悪いの話ではないですが、人によっては「これ以降は有料になるので」とラインを引かれる場合もある。
だけど、北島さんの場合は「無料なのにここまで話してくれるのか!」と思うことがすごくあるので、手厚いなと感じています。
僕はSnow Monkeyのフォーラムに数回しか書き込んだことがないですが、書き込み自体はすごく見ています。自分の知りたいことは書き込まなくても検索したら出てくるので、問題をすぐ解決することができます。基本的に分からないことがあればフォーラムで調べることができるので、とても重宝しています。
何か困った時にフォーラムで検索してもらえれば答えがすぐに見つかって、僕自身の効率があがるのも嬉しいですね。
他のプロジェクトに携わっている時は、メールで問い合わせが来て、同じ質問を何度も返信するのは本当にストレスだったので。
だから、フォーラムで質問をオープンにしていって、自分の力で解決できる人が増えるといいなとは思います。いずれは一種のコミュニティのようになればな、と。
私からすると、北島さんとSnow Monkeyを愛する人たちの中で、コミュニティはすでに作られている感覚はありますよ。私自身も「これがコミュニティってことなのかな」っていう気持ちを抱いています。
では最後に、北島さんの今後の目標を教えてください。
Snow Monkey があることで仕事ができるようになった、改善された、品質が上がった、というような声がもっと増えて、結果的に「Snow Monkey使って制作しています」と胸を張って言ってくれる制作側の人口が増えれば嬉しいですよね。
そうなればプロダクトも長生きするし、制作側の方へお仕事も回るようになればベストです。
僕は「Snow Monkeyを使っているなら僕を通してください」みたいなことは一切ないんです。そこはみなさんがライセンスの範囲で自由に使ってもらって、みなさんがハッピーになればいいですね。
Snow Monkeyは使えば使い込むほど、好きになるんですよね〜(笑)「Snow Monkey使ってます」とブログで宣伝されている方も多い印象です。
あと、北島さんには2度ほどお会いしたことがあるのですが、周りの方からすごく愛されているのが伝わりました。
そう言われると、なんか照れますね(笑)
WordPressに関わるまでは、サイト制作をしていて孤独感を感じていました。一人でやっている感、困ったことがあっても誰にも聞けない環境でした。
だからこそ、コミュニティ内で自分が分からないことが気軽に聞ける環境はとてもありがたいですし、”生きた”情報をキャッチできるのはとても新鮮な感覚でした。情報を交換する速度が一気に速くなりました。
Snow Monkeyのコミュニティは、Web制作者にとっての柱になるんじゃないかな、と思います。
熱狂的なファンの方がいて、コミュニティの大枠みたいなものはできている気がしています。
ただ、今の問題としては自分が中心になりすぎているということです。自分への属人性が高いと、例えば僕が年老いて引退するってなった時にプロダクト生命も終わってしまいます。それは寂しいですし、使ってくださっている方にも申し訳ないなと思います。
なので、僕以外の人が「Snow Monkeyってこういうものだよね」っていう共通した思想を持ってくれていたら、僕が抜けても誰かが開発し続けていくかもしれない。だから、コミュニティがさらに大きくなって自走して欲しいですね。
この記事は参加者でもある吉田樹さんがデザインしてくれました。わざわざテストサイトまでつくってくださって…(涙
ありがとうございます!!
また機会があったら企画してやってみたいと思います。