Snow Monkey の再配布・転売について

前提

先日某オンラインサロンで Snow Monkey テーマが再配布されまして、それに関してツイートしたところ(それとも僕のツイートでなくて反応した方々のツイートに対して?)色々な意見が飛び交ったようです。僕は今回の再配布についてそれほど問題だと思っていないので、変にいろいろ言い過ぎると「キタジマは問題だと思っている」と取られる方もいるかなと思って静観していたのですが、昨夜 Gutenberg を読む会に参加しているときに某ゆにさんから「もらい事故にあってたね〜」と言われまして「あれ?僕事故にあってたの?」と思った次第。それで事故にあってる・事故をおこしていると思っている方も実は結構いるのかなと感じたので、改めて僕の考えを書いておこうと思います。

下記は数年前に書いた記事で、今ではニュアンスが変わっている部分もあるかもしれませんが、基本的には今でも同じ考えでいます。

そもそもですが、Snow Monkey は 100%GPL です。GPL というのは、簡単にいうと、本来これは僕の著作物だから勝手に再頒布したらダメだけど、約束を守ってくれれば再頒布しても良いよ、というライセンスです。

GPL は「そのプロダクトとプロダクトの派生物にも GPL を引き継がないといけない」という決まりがあり、WordPress は GPL なのでその派生物である Snow Monkey も GPL になります。だからそもそも、再販・再頒布はやめてください、ということはできないんですよね。GPL を選択しているということは、再頒布されることを許している、ということなので。

でも、やっぱりそんなに自由に配られたら困るという人もいるわけで、だからスプリットライセンスにして勝手に再頒布されないように制限したりする人もいるわけですが、僕は別にそのような制限をしてもしなくても別に大して変わらないんじゃないかな?と思っています。

〜そういう少数の再頒布というのは、多少の広告効果にもなると思うんですよね。僕は Snow Monkey は他の有料テーマより使いやすいという自信があるので、どうにかして無料で手に入れた人も、Snow Monkey がめちゃくちゃ良ければ「Snow Monkey っていうテーマが良いよ〜」とどこかで人に言いたくなるじゃないですか。他の有料テーマは広告を打ったりアフィリエイト出稿しているものが多いですが、Snow Monkey はそのような広告に今は一切費用をかけていないので、そうやって多少再頒布されて使用されるのが、それらのコストの代わりだと考えています。

どう考えているか

そういう前提で、再配布・転売についてどう思っているかを完結にまとめるとすると、

  • 再配布・転売自体を制限するつもりはない(というか GPL なので、もしやりたかったとしてもできません)
  • 自分のケツは自分で拭いてほしい
  • 再配布・転売するのはライセンス上良いのだけれど、一緒に協力してやったほうがお互いに利益があって良くない?

ということになります。1つ目は当たり前だから良いとして(だから前述したように今回の某オンラインサロンでの配布もそれほど問題だと思っていないということです)、僕が気にしているのは2つ目になります。2つ目の問題に気づいたのは WordPress Tavarn の記事を見たときです。

僕は英語が苦手なので認識間違いがあるという前提で簡単に書くと、

  • WP Migrate DB Pro という有料プラグインを第三者がフォークして GitHub 上に無料で公開した。
  • WP Migrate DB Pro を扱う WordPress Tavern の記事のコメント欄で、その第三者がリポジトリの URL を共有した。
  • WP Migrate DB Pro の開発者が「Delicious Brains Incに関連付けられていないように見えるように、十分に異なる名前に変更する必要があります。ドキュメントがあるにもかかわらず、人々が混乱してサポートを求めて私たちに来る可能性があります。それらの詳細を読む人はほとんどいません。そして、私たちが拒否すると、彼らは私たちが「私たちの」製品をサポートしないことに混乱し、腹を立てるでしょう。※DeepL による翻訳」と返信。
  • それを受けてそのフォークした方がプラグイン名を WP Sync DB に変更

で、僕はなるほど確かにこれはありそうだな、と思って Snow Monkey の商標を取りました。

  • Snow Monkey を再配布・転売する ← ライセンス上問題ない
  • Snow Monkey を別の名前(例えばニホンザルテーマとか)に変更して再配布・転売する ← ライセンス上問題ない
  • Snow Monkey を再配布・転売した上でサポートはこちらに投げる ← 僕的に問題ある
  • Snow Monkey を再配布・転売した上でアップデート頻度に文句を言ったり、アップデートしなくなったときに文句を言う ← 僕的に問題ある
  • Snow Monkey を変な宣伝文句で再配布・転売した上でクレームを言ってきた顧客をこちらに回す ← 僕的に問題ある
  • Snow Monkey の公式っぽい感じのサイトをつくってそこで再配布・転売する ← 僕は商標権的に問題があると思っている

だいたいこういう考えです。1つ目は当然だとして「いやいや他のも何も問題ないだろう、あなたのプロダクトなんだからあなたが面倒みなさいよ」と言われてしまったら「え!なぜ!」という感じなのですが、自分のフォーラムや GitHub の対応だけでも毎日忙しくしているのに、何が楽しくてフォークされた先のリポジトリや転売された先のフォーラムにまで無償で対応しないといけないのでしょうか(多くの人はそんなことは求めていないと思いますが、求めてくる人もいると思っています)。そういうことはやりたくないから再配布や転売はライセンス上問題ないけど、自主的にやるんだから責任持って自分のケツは自分で拭いてくださいよ、ということです。

「2つ目以降は確かに問題があると思うけどそんな奴おらんやろ…」と思う方もいらっしゃると思いますが、有料・無料問わず OSS なプロダクトを公開してきて、僕の常識では考えられないような内容の問い合わせやクレーム、サポート依頼をしてくる方がちょいちょいいるという経験があるので、普通そんな奴おらんやろ…という点を考慮して言及ツイートをしたし、上記のようなことを書いています(なので繰り返しになりますが今回の再配布についてはそれほど問題だとは思っていませんし、「それほど」と書いているのは今回の再配布をみて上記の2点目以降で書いたようなことを平気でやる人がでてくる可能性はあると思っているからです)。

Snow Monkey を転売して利益を得ようとする人がいたとします。そしてその人は例えば Snow Monkey は海外翻訳版(マニュアル含む)が無いので海外翻訳版をつくって海外に売ろうとしたとします。そのとき、その人が僕になにも言わずに事を進めるのは別にライセンス上問題無いわけですが、僕に言わずにやるということは僕とその人との間では何もコンセンサスが取れていないので僕はその人のことを何も考慮せずに(というか知らないので)アップデートするし、破壊的変更を入れるわけです。翻訳だって当たらなくなるでしょう。そしたらその人もしんどいと思うんです。

それなら「海外に売りたいから一緒に協力してやれないか?」という相談がって、一緒にコンセンサスをとりながら進めたほうがお互いに利益があってハッピーじゃない?と思います(だからといって絶対に相談してからじゃないとやるなよとかそういうことを言うつもりはありませんよ、もちろん)。だからどうしてもキタジマになんて相談せずにやるぜ、それは権利だから。という人がいたとしたら、それは商標の問題にならない範囲でやってもらえばいいし、ただし一緒に協力してやる関係にはなっていないわけですから、自分のケツは自分で拭いてくださいね、ということです。

僕もビジネスでやっているのだから自分の利益より再販・転売者の利益を優先したい!なんて微塵も思いませんし、どうせやるならお互いに利益があるほうが良くない?と思います。やりすぎて僕の利益がなくなっちゃたら僕は開発もサポートも当然やめますし、それで文句を言われても困ります(そこでもやれよ言われるとしんどい)(無償のプロダクトではわりと言われる)。

他のプロダクトの商標ポリシーをみてみる

WordPress や Red Hat の商標ポリシーも見てみて、同じような感じなのではと思っているのですがどうでしょうか…。

WordPress や WordCamp の名称やロゴを使って不正な利益を上げることや、WordPress や WordCamp の公式なリソースを探している人を混乱させるのを防ぐこと。

Red Hat does not permit or consent to any use of its trademarks in any manner that is likely to cause confusion by implying association with or sponsorship by Red Hat.
(Red Hat は、Red Hat との関連や Red Hat のスポンサーを示唆することで混乱を招く可能性のある方法での商標の使用を許可または同意しません。※DeepL 翻訳

Free redistributions are expressly permitted by the GNU General Public License upon which Red Hat’s distributions are based.[1] However, to avoid misrepresentation of Red Hat’s trademark, material in the original distribution covered by the trademark must be stripped off or removed from the redistribution.

Where distributions (e.g., CentOS) have not been deemed sufficiently thorough in removing references to Red Hat, they have received warnings from Red Hat’s legal counsel. CentOS received such a notice seeking to have it remove all mention of Red Hat’s asserted trademarks from their website and their distribution.[2]

(自由な再配布は、Red Hatのディストリビューションが基づいているGNU General Public Licenseによって明示的に許可されています[1]。しかし、Red Hatの商標の誤認を避けるために、商標でカバーされているオリジナルのディストリビューションの材料は、再配布から剥ぎ取られるか、削除されなければなりません。

ディストリビューション(CentOSなど)がRed Hatへの言及を削除することが十分に徹底されていないと判断された場合、Red Hatの法律顧問から警告を受けたことがあります。CentOS はそのような警告を受け、Red Hat の主張する商標についての言及をウェブサイトやディストリビューションからすべて削除するよう求められました[2]。 ※DeepL 翻訳

言及ツイートを眺めてみる

以下、適当にツイートを拾っていこうと思います。当日はもっとツイートがあったと思うのですが、日がたってだいぶ流れてしまっていたので、僕のツイートに直接言及したもの・キーワード検索に引っかかったものの中で、言及しておいたほうが良いのかなと思うものと疑問に思う部分があるものを取り上げました。

↑無断配布は禁止されていません。今回はメンションがついていたので反応したのですが、DM だったら反応しなかったなと思います(そのときはくわがいさんには何らか返信すると思いますが)。GPL であれ禁止されているものであれ、やる人はやるのでこっそりやられたらどうしようもないし、GPL だから別にやられても良いのだけど、フォークではなく Snow Monkey 公式ブランドによる行為だと誤認されるほどおおっぴらにやられると前述した問題点があるのではないの?と僕は考えていますがどうなのでしょう…。

↑前述したように今回のような再配布自体には困っていません(厳密に言えば売上に影響があるかもしれないけど、現状はそれについても困っていない)。「なんで」に答えるとすれば「WordPress が GPL だから(WordPress も b2 が GPL だから)」ですかね。

↑ライセンス上は、再配布先で手に入れたものを「無料で使える」ということになるかなと思ったのですがどうでしょうか。僕はサポートはしないし特典も受けられないけど。それに僕も再頒布が OK だからといって「みんな!無料で使って!」とは言わないけど。

↑購入ありがとうございます!

↑うれしい!

↑似たようなテーマではなく Snow Monkey そのものを Snow Monkey 公式サイトと誤認させるようなサイトで販売した場合は問題ないのでしょうか…?「わざわざサイトで説明まで必要かな…。」については、(商標の件ではない)問い合わせ対応やサポート対応をするなかで「こんなのわざわざ説明しないといけないの…」というのは結構あるので、あるならあるに越したことはないのではと思います…。

↑僕は商標権的にも問題ないと思っているんだけどどうなんでしょう。「Snow Monkey(ブランド)による提供」と誤認されるような形だと問題だと思っている(知見がある方どうでしょうか?)

↑うれしい!

↑多分オレインさんの発言も「お気持ちだ」と言われると思うんだけど、敬意とかはおいておいて、試用版があるにも関わらず「Snow Monkey のために」製品版を再配布している人がいるとしたら、正直「なんで?」と思いますね。それならもう試用版なんてものはなくして GitHub リポジトリだけにしてしまったほうがシンプルなんでしょうけれども、そうなったときに得する人っているんですかね。

↑誤解を恐れずに言えば、僕から購入してほしい人と購入してほしくない人がいます。例えば Snow Monkey のブランド色は嫌いだけどテーマは使いたいという方や、僕が技術屋っぽくてこわいからサポートうけたいけどフォーラムに書き込めないとか、そういう方は僕から購入することでアンハッピーになる可能性が高いと思います。あと、どうにかして無料(あるいは激安で)使おうとする人も結果的には満足なサポートが受けられず100%の性能を発揮できない状態でしか使えないのでアンハッピーになると思います。最後のパターンの人はおいておくとして、前者のパターンの方々は僕ではない誰かから購入してサポートを受けるという方法ってなにかうまいことできないのかなぁというのはしばらく前から思っていて、ミートアップやオンラインコミュニティでも書いたりしています。まぁそういうのも、それいいねと思う人が勝手にやりだすのはライセンス上問題ないわけですけども、適切にサポートするにはアップデートや機能を僕と一緒に把握・コントロールできていないと無理だと思うんですよね。だから繰り返しになりますが、勝手にやるのはライセンス上問題ないけどやるなら自分のケツは自分で拭いてほしいし、それよりも一緒にやったほうがお互いに利益があって良くない?と僕は思います。

↑現在試用版はアップデートできない・コピーライトが変えられないという機能制限があります。以前は完全に無制限の製品をそのままお渡ししていました。もちろん GPL なのでそれをそのままラッキーと使われてもしょうがないのですが、わざわざお金を払って使っている方もいらっしゃるので、本使用するときは購入していただきたいと思っていますと一言添えています。まぁそれもお気持ち表明で制限するな!と言われてしまえばそうなんですけど、結局そのまま使っちゃう人が思ったよりいたっぽいので制限をつけるということになりまして、本当は制限なんてつけずに思う存分試してほしいのですが、これを両立させる方法が僕には思い浮かびませんでした。GPL だから手に入れたら無制限で利用できるというのはもちろんそうなのですが、試用版は提供しないとか、試用版には機能制限があるというのは本当はなんか違うと思うんですよね。良い方法が僕には思い浮かばないけど。

ちなみに製品版についても認証による制限をつけていないので、サブスクリプションが切れてもアップデートし続けることができるようにしています。サブスクなプロダクトは認証をつけていてサブスクが切れるとアップデートできなくなるものが一般的だと思うのですが、これも試用版と同じで制限をつけるというのがなんかいやなんですよね。でも再配布や転売が超主流派になってしまえば再配布されても問題ないように認証をつけようという発想になることも理解できます。僕はできる限りやりたくないけど。難しいですね。

↑これは…?と思う件がでてきたときは相談したい!

この記事を書いた人

キタジマ タカシ

長崎県長崎市在住。地元のWeb制作会社でWebデザイナー/エンジニアとして従事した後、2015年にフリーランス [ モンキーレンチ ] として独立。WordPress のテーマやプラグイン、ライブラリ、CSS フレームワーク等、多数のプロダクトをオープンソースで開発・公開しています。

Snow Monkey オンラインコミュニティ

Snow Monkey をより良いテーマにするために、今後の機能開発等について情報共有したりディスカッションをしたりする場所です。より多くのユーザーの交流があったほうがより良いプロダクトに育っていくと思いますので、ぜひご参加ください!