Snow Monkey をつくることにした経緯、また、なぜ有料販売することにしたのか

Snow Monkey アドベントカレンダー1日目の記事です。去年やった Mimizuku アドベントカレンダーは完全に一人だったのですが、今年はすでに3名の方に参加表明いただいていてありがたい限り。

1日目ということで、いきなり技術系の話といういのもあれなのでユーザーよりの話を書こうと思ったのですが、もう特徴とかも既に書いちゃっているので、そもそもなんで Snow Monkey つくろうと思ったのかとか、なんでいつもみたいに公式リポジトリで無料配布じゃなくて有料テーマにしたのかとか、そういったことを書いてみようと思います。

なぜ Snow Monkey をつくることにしたのか

正直、最初から何か熱い想いがあって開発に着手したとかそういうおもしろい話は全然ないです^^;

昨年 Mimizuku というテーマを公開しました。仕事でテーマ開発のご依頼をよく頂くのですが、いかに効率よくテーマを開発できるかというのを考えたときに、スクラッチで0から毎回つくるよりも、必ず入れる機能やこれがあれば効率がかなり上がるという仕組みなんかをパッケージしておくなら「親テーマ」という形にしておくのがベストだな、と考え至りました。その考えをもとに子テーマ開発を超効率化するためのフレームワークという位置づけで開発しはじめたものがMimizuku になります。

で、実際効率あがったの?というのが気になるところだと思うのですが、結局1件も導入できなかったんですよね(TT
Mimizuku は僕の理想を追求する形でつくったので、一般的な WordPress テーマとは設計思想が違っていて、しかも僕は直案件はほとんどやらないので、納品した後のメンテとかを考えるとなるとなかなか導入が難しかったんです。悲しい。

でもせっかくつくったし、僕の考えた最強のテーマ設計思想が本当に最強なのかちょっと試してみたいなぁという思いがあったので、空いた時間にプライベートでちょいちょいテーマをつくり始めたのがきっかけです。この時点では名前もまだ決めてませんでしたし、よっしゃ!やるぞ!という感じでもなく、なんなーくという感じでした。(ちなみに、その後 Mimizuku は2つの案件で使うことができました、わーい!)

WordCamp Kyoto 2017 にて

そんな中、WordCamp Kyoto 2017 に参加しまして、懇親会でものくろさんとお話する機会がありました。全国を飛び回って WordPress のスタートアップ講座などをされている方なのですが、その受講生さんやクライアントさんにブロガーさんが多いので、有料テーマどうなんですかね〜?需要ありますかね〜?みたいな話をしまして。前からなんとなくテーマ販売はしたいと思っていたので。そこで、ものくろさんが人をその気にさせるのが上手いというのもあるかもしれませんが、これはいけるかもしれない…と感じたんですよね。需要はありそうだと。そこから名前を Snow Monkey と決めたりして、本格的に開発をスタートさせました。

あともう一つ本格的にやると決めた理由があります。僕はもう数年前から自身のプラグインである MW WP Form に機能を追加するアドオン(機能拡張プラグイン)を販売しておりまして、これが毎月ある程度安定して売れはするものの、伸びはしない、という状態にあります。テーマじゃなくてこのアドオンを本気で伸ばそうとするというのもあると思いますが、このアドオンは僕は一切頑張らずに放っておいてチャリンチャリンなってくれるというのがコンセプトなので、これで頑張りたくはないんですよね。じゃあ別に有料のプラグインをつくって売る、というのもあるとは思うのですが、僕の知り合いを見渡しただけでも文樹さんとか宮内さんとかとろゆにさんとか僕より数段レベルが上のプラグイン開発者がいて、しかもみんな無料でプラグイン公開してるのにそこで有料で戦うのは無理です。絶対無理。

もう一つの理由

そこで有料テーマ。話を聞いても、ネットで検索しても需要はかなりありそう。でもプラグイン業界ほどいないんですよ、スーパーマンが。と断定しちゃうとやってる人にあまりに失礼ですが、実際どうでしょう?少なくとも僕のまわりで考えると、プラグインに比べるとそもそもテーマを開発している人がものすごく少ないし、そういう意味で凄い人も相対的に少ないなと。

また、ネットで有名な有料テーマを仕事で指定されて使ったりすることもあるのですが、まぁこれがひどい。ネット上では評価されている。普通に使うだけなら多分良いんですよ。でもそれをベースに機能追加だとかカスタマイズしようとするとボロがでる。でも GitHub にリポジトリがあったりするわけでもないので手元では修正してもプルリクを出すこともできない。コードにおいても、インデントもまともになかったり一貫性がなかったり、いきあたりばったりで書いてある。これはいけるぞと。

僕が調べた限りだと、一般ユーザーの間では、テーマで評価されるのは次の3点が多いと感じました。

  • 多機能、コードを書かなくても管理画面で設定するだけで色々変更できる
  • デザインがきれい
  • SEO につよい

1つめの「多機能」の部分は実際内部は結構でたらめというのはわかったのでここは勝てると踏みました。

2つめのデザインがきれいは、あくまで僕の感覚では、ビジネスの場で求められるほどのクオリティはなくても大丈夫そうだなと感じました。さらに、僕には Basis があるので、カワイイ系とかグラフィック的に良いとかは無理だけど、バランスが整っていて写真と文章を入れれば何となくきれいに見えるというのは多分つくれるなと。

3つめは僕はよくわからないのであれですが、特別凝ったことをしてそうなテーマは見つけきれなかったので、極端に落ちたりしなければユーザーが勝手に評価してくれるという仕組みなんじゃないか(という非常に偏った見方…)ということで、これは本格的にやったら意外におもしろいんじゃないかなと思った次第です。

なぜ「有料」テーマなのか

僕はこれまで KotetsHabakiri の公式ディレクトリ掲載テーマと、Mimizuku、あわせて3つのテーマを無料で公開しています。だけど今回の Snow Monkey は有料で販売することにしました。前述したように国内の有料テーマ市場は海外に比べるとまだ未成熟でいける可能性があると踏んだからというのはありますが、もともと有料テーマ販売は一度やってみたいと思っていたから、というのが理由です。

ではなぜ有料テーマ販売をやってみたいと思っていたかというと、請負だけやり続けることに限界を感じていたからです。もう年末ということで11月までの経理をやりましたが、一応1年目、2年目、そして今年3年目と売り上げは伸びています。でも、これから先はどうでしょうか。請負で売り上げを伸ばす方法を考えたとき、超単純化すると次の2つになると思います。

  • 請ける数を増やす
  • 単価を上げる

現在でもいくつかの案件はスケジュールの都合でお断りしたりしている状況なので、例えば睡眠時間を限界まで減らして土日も関係なく働けば、請ける数を増やして売り上げを伸ばすことはできるかもしれません。でも、それは体力的に不可能です。下手すれば死にます。毎月安定して仕事があれば人を雇用するという方法もあるとは思いますが、安定度はそれほどないですし、そこまでの度量もありません。では単価を上げるしかありませんが、まぁそれも限度があるじゃないですか。僕の守備範囲は HTML/CSS のコーディングと WordPress のテーマ/プラグイン開発なので、僕じゃなくてもできる人はすごく多いわけなので。

となると、請負以外で売り上げを積み増しするのが現実的だなと思いました。大きな額ではないですが MW WP Form のアドオン販売である程度毎月安定してお金が入ることは実証できているので、それより市場が広そうで勝負できそうな国内の有料テーマ市場であればおもしろそうだなと。別にそれで莫大な利益を上げたいと考えているわけではないので、毎月ある程度確保できるようになれば、新しいテーマを開発したり、他にも別の展開が考えられるようになるので、いよいよ有料テーマ販売をやるということにしました。まだ開発期間を考えると回収できているとはいえませんが、ありがたいことにわりと順調なので、ペースが落ちないようにいろいろ動いていきたいです。

公式テーマディレクトリにテーマを掲載することで感じたデメリット

あと、公式テーマディレクトリに掲載してもらうことにそれほどメリットを感じなくなった、というのもあります。直接のお金にならないというのを除けば、確かによく多くの人に使ってもらいやすいですし、テーマレビュワーによるレビューも請けられます。そして一番のメリットであるワンクリップアップデートに対応できます。

でも、KotetsHabakiri とやってみて、デメリットもわかりました。まぁ、僕だけかもしれません、と前置きしますが、アップデートが超大変です。GitHub にリポジトリを持たないという選択はありえないので GitHub でも管理するわけですが、GitHub にプッシュしてタグ付けもしてるのに、また公式ディレクトリ用にファイルをまとめ直して zip で固めて申請、しかもそれがすぐに反映されるわけでもない、というのが非常にめんどくさい。また、無料かつ多くのユーザーが使うということで、より「使い込む」方が多いので互換性を考慮したアップデートがすごく大変です。

そういうことを考えると、GitHub 経由でワンクリップアップデートできる仕組みもつくったし、2つやったことでだいたいテーマの品質を保つ書き方もわかったし、wpcs と phpmd によるチェックも自動でできるようにしたので、頑張って公式ディレクトリに載せる必要性はそれほどないな…と思うようになりました。

明日は

というところで、Snow Monkey アドベントカレンダー2日目は公式ディレクトリテーマレビュワーのミルコンさん。公式ディレクトリを選択しなかった Snow Monkey を、テーマレビュワー視点ではどう見えるのか、非常に楽しみです!

この記事を書いた人

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キタジマ タカシ

長崎県長崎市在住。地元のWeb制作会社でWebデザイナー/エンジニアとして従事した後、2015年にフリーランス [ モンキーレンチ ] として独立。WordPress のテーマやプラグイン、ライブラリ、CSS フレームワーク等、多数のプロダクトをオープンソースで開発・公開しています。

Snow Monkey オンラインコミュニティ

Snow Monkey をより良いテーマにするために、今後の機能開発等について情報共有したりディスカッションをしたりする場所です。より多くのユーザーの交流があったほうがより良いプロダクトに育っていくと思いますので、ぜひご参加ください!